糖質制限FAQ-4
糖尿病関連
FAQ: 糖尿病関連
Q1. 食後血糖値の「食後」とはいつのことですか?
食事開始からの経過時間を指します。
「食後30分」は食べ始めてから30分後、「食後120分」は同じく120分後となります。
「食べ終わってからの時間」ではありませんので注意しましょう。
Q2. 空腹時血糖値の「空腹時」とはいつのことですか?
基本的には「早朝空腹時」です。絶食が10時間以上で、朝起きて何も食べていない時を指します。
Q3. 糖質制限をしていますが、「食後」血糖値が改善しません。
1型糖尿病で、自前のインスリンが枯渇している場合は、糖質だけでなくタンパク質摂取によっても血糖値が上昇します。2型糖尿病でも病歴が長く内因性インスリンが枯渇している場合は同様ですが、こちらはまれです。
それ以外の糖尿人(境界型含む)においては、糖質だけが血糖値に直接作用しますので、糖質制限食実践により、食後高血糖はリアルタイムに改善します。
毎回の食事でどの程度糖質を摂取しているか、一度細かく見直してみましょう。
Q4. 「食後」血糖値は改善したが、「空腹時」血糖値が改善しません。
糖尿人においては、就寝前よりも翌朝の血糖値の方が高くなることがよくあります。「暁現象」と呼ばれるものです。
詳しくは下記ブログ記事をご参照下さい。
参考URL: http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3236.html
Q5. シックデイとは何ですか?
風邪等で体調を崩した時や、不眠などによりストレスがかかった時に、血糖値が普段よりも高値となることがあり、これをシックデイ(sick day)と呼びます。
インスリン注射をしている糖尿人、高齢の糖尿人では急性の重篤な合併症が起こる可能性があるので注意が必要です。
Q6. 血糖値の自己測定をしたいのですが。
血糖値自己測定(SMBG)は当協会としても大いにお奨めいたします。
インスリン注射を打っている糖尿人には健康保険が適用されますが、そうでない方は自費で購入することになります。
特定の測定器を推奨するわけではありませんが、現時点(2015年1月)では下記のものが最も安価となります。
・ニプロTRUEpico 自己検査用グルコース測定器 3,500円
・ニプロTRUEセンサー 自己検査用グルコースキット 30枚/箱 2,940円
米国でも同じものがはるかに安く販売されています。可能な方は個人輸入するのもよいでしょう。
Q7. HbA1cとは何でしょうか?またどうやって計ればよいですか?
赤血球のタンパク質であるヘモグロビンとブドウ糖が結合したものをグリコヘモグロビンと呼びます。
グリコヘモグロビンには何種類かありますが、糖尿病と密接に関連するものがHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。
通常、HbA1cの値は過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映しているとお考えいただけば結構です。
HbA1cは[%]で表し、高いほど合併症のリスクが高まるとされています。日本糖尿病学会の現在の規準値は下記のとおりです(NGSP)。
・血糖正常化を目指すときの目標値(正常値):6.0%未満
・合併症を予防するための治療目標値:7.0%未満
・有害事象等により治療強化が困難な場合の目標値:8.0%未満
HbA1cは医療機関で計測します。海外には自己測定器もあるようですが、安価なものではないので個人輸入するほどのものでもないでしょう。
Q8. 糖質制限中の点滴はどうすればよいでしょうか?ブドウ糖溶液がベースだったと思いますが血糖値が心配です。
糖尿病で糖質制限をしている方が何らかの理由で点滴を受けられる際は、担当医師に糖尿病であることを伝えれば、生理的食塩水ベースの点滴に変えてもらえると思います。
Q9. 糖質制限を徹底できず、インスリンを打ちながら甘いものを食べてしまうことがあります。意味がないですか?
たまにはそんな日があってもいいと思います。食事療法は長く続けることが大切ですので、我慢ばかりでストレスを溜めて止めてしまうよりはよいでしょう。
普段は糖質制限を行い、時々緩めて甘いものを適宜食べ、その時だけインスリンを増やすとよいかと思います。
「糖質制限食」+「(時々)糖質管理食」で長続きを目指しましょう。
Q10. 糖尿病の薬にはどのようなものがありますか?
糖尿病の薬は全て血糖値の上昇を抑制するものです。
経口薬としては下記のものがあります。詳しくはコチラのページでご確認下さい。
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インスリン分泌促進薬: インスリンの分泌を促し、血糖値を下げる薬です。作用時間が長いので低血糖になりやすいです。
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ブドウ糖吸収阻害薬: 小腸内での[多糖類(デンプン)→単糖類(ブドウ糖)]への分解を阻害し、食後血糖値の上昇を抑える薬です。α-グルコシターゼ阻害薬(αGI薬)と呼ばれます。
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インスリン抵抗性改善薬: インスリン抵抗性(インスリンの効き目)をよくする薬です。
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インクレチン関連薬(DPP-Ⅳ阻害薬): インスリンの分泌を促進させるインクレチンというホルモンを増強させる薬です。
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SGLT2阻害薬: 尿中にブドウ糖を1日あたり100g排泄させる薬です。
Q11. 糖尿病治療薬と糖質制限を併用しても問題ありませんか?
血糖降下作用がある薬(SU剤、インスリン注射)を使用されている方が糖質制限をすると低血糖になる可能性が高いので、極めて慎重な導入が必要です。
α-グルコシターゼ阻害薬(グルコバイ、セイブル、ベイスン)、BG薬(メトグルコ、メルビン、ジベトス)は基本的に問題ありません。スーパー糖質制限が難しい方や、たまに糖質を摂りたい時などに適宜利用するのはよいでしょう。
Q12. 主治医が糖質制限に反対します。どのように対処すればよいでしょうか?
「糖質管理食」を試してみたいと伝えてみてはいかがでしょうか?それでも聞く耳を持たないようでしたら、主治医を変えるのも賢明な選択肢の一つです。
Q13. 機能性(反応性)低血糖ですが、糖質制限しても問題ありませんか?
機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があることが多いです。
糖質摂取→インスリン分泌が蔓延、効き過ぎて低血糖→糖質摂取→...
という悪循環ですね。糖質制限をすると血糖値の上昇が殆どなくなり、インスリン分泌が少量ですむので、機能性低血糖による症状は改善します。
糖質制限を実践しても改善しない症状がある場合は、機能性低血糖以外の病気が疑われます。
参考URL: http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2788.html
Q14. タンパク質の摂りすぎによる悪影響はないのですか?
「タンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかける」と医療関係者さえもがよく言いますが...
腎臓が正常な人が、タンパク質を多く摂ったせいで障害が出たという医学的証拠は存在しません。
腎機能に問題があるケースでも、日本腎臓学会のCKD診療ガイド2013では、
「GFRが60ml/分以上あれば、顕性タンパク尿の段階でも、糖尿病性腎症2期、3A期までは、蛋白質制限必要なし」
としていますし、
米国糖尿病学会(ADA)は、Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。
根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。
ちなみに厚生労働省も、
「タンパク質の耐容上限量を策定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした」
との見解を示しています(日本人の食事摂取基準2010年版)。
「タンパク質を摂り過ぎると云々」は今のところ風説でしかないようです。
Q15. 脂質の過剰摂取はよくないと思いますが...
いわゆる「脂肪悪玉説」ですが、本家(?)の米国でも既に覆りつつあります。
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米国医師会雑誌2006年2月8日号
「低脂肪+野菜豊富な食生活」は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げない。総コレステロール値も不変。
米国の大規模RCT試験:5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果が判明(脂肪熱量比率20%で強力に指導)。
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New England Journal of Medicine、2006年11月9日
低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなしという結果が出ています。82802人を対象にした、20年間の大規模コホート研究です。
Q16. 糖質制限で、糖尿病(または境界型)は治るのでしょうか?
16-1. 真性糖尿病の場合
完全に糖尿病であるとの診断をもらっている人のケースです。定説では、「一旦糖尿になったら決して治らない」と言われていますが、糖質制限を続けることで正常化する人もいないわけではありません。
「インスリン抵抗性が主の糖尿病なら、抵抗性が改善すれば、糖代謝が正常人のパターンに戻る人もまれにいる」とお考え下さい。
参考URL:http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1251.html
16-2. 境界型(予備軍)の場合
個人差はあると思いますが、境界型の間であれば、糖質制限食によって正常化する可能性は高いと考えられます。
これについては、2014年7月にニュージーランドの医学雑誌に掲載された新潟労災病院消化器内科部長・前川智先生の論文があります。
「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4063858/
境界型糖尿病36名に12ヶ月間の低炭水化物ダイエット(120g/日の糖質)をさせたところ、
・25名(69.4%)が、OGTTで正常化
・11名(30%)は境界型(IGT)のまま
・糖尿病発症は0名(0%)
対照群(普通食)36名中、
・3名(8%)が正常化
・28名(78%)は不変でIGTのまま
・5名(14%)が糖尿病発症
糖質制限食実践により、境界型糖尿病の耐糖能が69%も正常化していて、対照群に比べて素晴らしい成果が見られています。
Q17. 糖質を摂らないと耐糖能が落ちるのでは?
糖質制限を実践している方には、耐糖能が改善する人もいますが、時に低下する人もいます。
質問16で紹介した「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」では、境界型糖尿病が糖質制限によって正常化した(耐糖能が改善した)割合が高いことが示されています。
また、根本的なところでは、糖質制限食は「糖尿病を治す(耐糖能を正常化させる)」ことを目的としているものではなく、「糖尿病の合併症を予防する」ためのものです。
例えば、当会代表理事の江部康二医師は、スーパー糖質制限食を実践している限りは正常人ですが、糖質を食べれば糖尿人です。
なお、糖質制限食を続ける限りは、耐糖能の低下は問題とはならないと考えております。
参考URL:
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3220.html