糖質制限FAQ-5
血液検査など
FAQ: 血液検査関連
Q1. 血糖値は下がったのですが、中性脂肪値が上がりました。
糖質制限をすると、空腹時の中性脂肪値は正常化することが殆どです。
中性脂肪値のピークは、食後4-6時間、飲酒した場合は12時間後と考えられています。計るタイミングによって数値が大きく変動しますので、空腹時に測定してもらってみて下さい。
日本人間ドック学会の判定基準では、中性脂肪値が:30-149mg/dl が正常、150~249mg/dlの場合は要経過観察、250mg/dl異常の場合は精密検査または治療が必要だとしています。アメリカでは、他の検査に何の異常もない場合は1000mg/dl以上で治療を考慮とされています。
◆米国ガイドライン(N Engl J Med 2007;357:1009)
※心筋梗塞の既往歴のない人
・正常 999mg/dl以下 (99.9%)
・急性膵炎予防 1,000mg/dl以上 (0.1%)
◆日本動脈硬化学会、特定健診(40~74歳)判定基準
・正常 149以下 (76%)
・生活習慣指導 150~299 (20%)
・受診勧奨 300以上 ( 4%)
参考URL:
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3214.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-429.html
Q2. 糖質制限をしたらLDLコレステロールが上がった
LDLコレステロールについては、糖質制限により上昇する人、不変の人、下降する人と様々です。
もともとコレステロールが少ない食事(菜食中心など)をしていた人が、スーパー糖質制限食で肉、魚、卵、チーズなどコレステロールの多い食材を食べた時は、一時的にLDLが大きく上昇することがあります。
数年で肝臓が調整するようになるので、元に戻ることが殆どです。
ちなみに、「HDL=善玉、LDL=悪玉」と一般によく言われますが、これは誤りです。どちらも人体にとって重要な成分ですので、一概にLDLが低ければよいというものではありません。
◆米国ガイドライン(心臓病学会 2013年11月)
・正常 189以下 (97%)
・遺伝病検査 190以上 ( 3%)
※低下治療目標値は廃止されました
◆日本動脈硬化学会、特定健診(40~74歳)
・正常 119以下 (45%)
・生活習慣指導 120~139 (25%)
・受診勧奨 140以上 (30%)
参考URL:
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2994.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2969.html
Q3. BUN(尿素窒素)が上がりましたが大丈夫でしょうか?
糖質制限食実践により、相対的に高蛋白食になります。
摂取されたタンパク質が分解されるとアミノ酸となりますが、アミノ酸の分解産物であるアンモニアが、肝で尿素サイクルの代謝をうけて尿素が産生されます。
尿素の殆どは尿中に排泄されますが、一部は再吸収され、血中に戻されます。これが血中尿素窒素(BUN)となります。
タンパク質摂取量が増えると、BUNも相対的に高値となります。これは生理的な現象で、腎機能障害ではありません。血中クレアチニン値や血中シスタチンCの値が正常であれば問題ありません。
参考URL:http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1412.html
Q4. 尿中ケトン体が陽性となりましたが、大丈夫でしょうか?
糖質制限(特にスーパー糖質制限)をしばらく続けていると、身体が本来のエネルギーシステムである脂肪酸とケトン体をメインに使うようになり、血中ケトン体が飛躍的に上昇します。
体脂肪がよく燃えて血中ケトン体が上昇すると、尿中ケトン体も陽性となります。これは「生理的ケトーシス」と呼ばれるもので、インスリン作用が確保されている限りは全く危険性はなく安全なものです。
これと誤解・混同されているものとして、「糖尿病ケトアシドーシス」があります。こちらは自前のインスリンが枯渇している(主に)1型糖尿病の方が急にインスリンを止めたり減量した場合や、ペットボトル症候群の時に起こる重篤な病態です。
つまり糖尿病ケトアシドーシスはインスリン作用が欠落していることが前提となる病態です。
ケトン体について詳しく知りたい方は江部医師ブログの「ケトン体」カテゴリーをご覧下さい。
参考URL:http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-category-23.html
Q5. ケトン体を自分で計ることはできますか?
1.尿中ケトン体
尿中のケトン体を測定する検査紙は何種類かあります。薬局で入手可能ですが、常備している所は少なく、取り寄せになると思われます。
2. 血中ケトン体
アボット(Abbott)社のプレシジョンエクシード(米国ではPrecision Xtra)には血中ケトン体(βヒドロキシ酪酸)測定機能があります。
Q6. 尿酸値が上がってしまいました。痛風にならないか心配です。
糖質制限食を始めて、尿酸値が上がる人、不変の人、下がる人がいます。
痛風専門医の元鹿児島大学病院内科教授・納光弘先生によれば、尿酸を確実に上昇させるものは、
1. ストレス
2. 肥満
3. 大量の飲酒
4. 激しい運動
5. プリン体の摂りすぎ
だそうです。
従来、肉の摂りすぎやビールの飲み過ぎが尿酸値を上げるということが常識とされていたのですが、食事由来の尿酸は約100mgで、一日に生産される総量約700mgに比してかなり少なく、食事よりストレスや肥満の方が、尿酸値への影響が多いことが分かってきています。
糖質摂取の有無とは無関係に、摂取エネルギー不足の時(断食時を含む)も尿酸値は急上昇します。これも大きなストレスと考えられます。
糖質制限開始後の尿酸値上昇については、3-12ヶ月程度で基準値に戻る場合が多いです。これまで痛風発作を起こしたことがない方はあまり心配せずに経過を見てみましょう。
また、下記をチェックしてみて下さい。
・摂取エネルギーは不足していないか
・糖質制限食が精神的・肉体的にストレスになっていないか
・お酒を飲み過ぎていないか
・運動量は適切かどうか
・水分を積極的に摂取しているか
・プリン体を特に多く含む食品を食べ過ぎていないか
※プリン体が多い食品の例(200mg以上/100g)
干し椎茸、レバー(牛・豚・鶏)、カツオ、マイワシ、大正エビ、オキアミ、魚の干物(イワシ、アジ、サンマ、カツオブシ、ニボシ等)、サプリメントの一部(DNA/RNA, ビール酵母、クロレラ)
他に、尿酸値を上昇させる薬剤もあります。
・サイアザイド系降圧利尿薬(フルイトランなど)
・ループ利尿薬(ラシックスなど)
・喘息の治療薬のテオフィリン(テオドールなど)
・結核治療薬のピラジナマイド(ピラジナミドなど)
・少量のアスピリン(小児用バファリンなど)
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